トカラベラ（幼魚）

トカラベラは学名Halichoeres hortulanus、スズキ目ベラ科ホンベラ属に分類される魚で、体長20cmほどまで成長します。名前の由来については明確な情報は見当たりませんが、「トカラ」はおそらく日本の琉球列島に含まれる「トカラ列島」などの地名が関係していると推測されます。ちなみに、成長段階によって雄、雌、幼魚それぞれで体色が大きく変化するのもこの仲間の特徴です。
分布はインド洋から紅海、中・西部太平洋にかけて広く見られ、日本では伊豆諸島、小笠原諸島、和歌山県以南の太平洋岸、琉球列島、沖縄県などで観察できます。ただしハワイ諸島には生息しないのが特徴です。幼魚の姿は、白色地に黒色の太い横帯が目立ち、淡い体色ながらも黒と白のコントラストが美しいです。そして背鰭には黄色い「天使の輪」のような模様があり、他のベラの仲間の幼魚とはひと味違う印象を与えます。
スキューバーダイビングでは、サンゴ礁域や岩礁周辺の砂地、ポイントによっては浅いリーフトップでもよく見かける魚です。特に幼魚は水深の浅い場所をヒラヒラと漂うように泳ぎ、フォトダイバーに人気があります。トカラベラは単独行動が多く、危険を感じると夜間や驚いた際にはすぐ砂中に潜る習性があります。成長とともに派手な体色に変化していくので、ダイビングで同じ個体を追うのも楽しみのひとつ。
他のベラの幼魚と見分けるポイントとしては、白地に黒い横帯、そして背鰭に黄色の「輪」があることが最大の特徴です。ほかのホンベラ属でも幼魚は似た模様を持つことがありますが、この黄色の輪模様はトカラベラ幼魚の大きな目印になります。さらに、キュウセンの幼魚やスズキ系ベラの幼魚は黒白のまだらや横帯が多いですが、背鰭の模様やヒレの形状で細かく区別できます。フィールドガイドの写真や図鑑で模様をしっかり見比べることで、他の種との違いを把握できるでしょう。
まとめると、トカラベラの幼魚は白と黒の横帯と背鰭の黄色い「輪」が特徴的な、ダイビングで出会える美しい小型魚。サンゴ礁や浅い岩礁の砂地を好み、スキューバで観察するには絶好の被写体です。成長すれば体色が大きく変わるので、観察しながらその変化も楽しむことができます。見分け方や色彩、分布の広さまで、実に多彩な魅力を持つ魚と言えるでしょう。