テングチョウチョウウオ

テングチョウチョウウオ（Chaetodon selene）は、スズキ目チョウチョウウオ科に分類される魚類の一種です。西部太平洋、特に相模湾以南からミクロネシア、オーストラリアにかけて分布しています。日本では南日本の太平洋沿岸や琉球列島で見られますが、数は少なく稀種とされています。主に水深10～50mの岩礁域やサンゴ礁域に生息し、単独またはペアで行動することが多いです。学名の「selene」はギリシャ神話の月の女神に由来し、背鰭から尾鰭を経由して臀鰭に伸びる三日月の形をした黒帯にちなんでいます。和名の「テング」は、長い吻が天狗の鼻に似ていることから名付けられました。
テングチョウチョウウオの体長は約15～16cmで、白、黄色、黒のコントラストが美しい魚です。体側には点列状の斜帯があり、頭部の眼を通る黒色帯は成魚になると眼下で色が薄くなります。黄色の点が頭部から背びれに向かって連なっているのも特徴です。
スキューバーダイビングでテングチョウチョウウオを観察するのは非常に魅力的ですが、その稀少性から出会うのは難しいです。特に幼魚は入荷後すぐに購入し、適切な餌付けを行う必要があるため、観賞魚としても手に入りにくいです。ダイビングポイントとしては、南日本の太平洋沿岸や琉球列島の砂泥底や岩礁域が狙い目です。
テングチョウチョウウオに似た種として、ガーディナーズ・バタフライフィッシュが挙げられます。この種は本種よりも黒色の部分が広く、スリランカからオマーンまでのインド洋に分布しており、本種とは分布域が重なりません。見分けるポイントとしては、体側の斜帯の有無や黒帯の形状が参考になります。
テングチョウチョウウオは、その美しい色彩と独特の模様から観賞魚としても人気がありますが、稀少性ゆえに出会うことが難しい魚です。スキューバーダイビングでの観察を楽しむ際には、分布域や生息環境をしっかりと把握しておくことが重要です。